インプラントと歯周病
「歯周病の治療をしてからインプラントをした方がいいですか?」と時々質問があります。
その答えは「その方が絶対に良い」です!
歯周病が進行した患者さんは歯周病の治療をしっかり行ったとしてもその後のインプラントの『成功率』(インプラントが完全に良い状態で5年以上維持される状態)はそうでない人よりも低いことが分かっています。
ただし、インプラントの『生存率』(インプラントが抜けることなく5年以上ちゃんと咬める状態)は適切な歯周病治療を行えば健康な人と同じくらいの高い水準を保てることも分かっています。
歯周病は完治する病気か?
歯周病の本質は骨の病気です。歯を支えている骨がどんどん減ってしまうことで歯が動き、
骨が完全になくなってしまうと歯が抜けます。
そのため「失われた骨を元通りにする」ことができればベストですが中度~重度の歯周病では、現在の医学ではそれが難しい場合が多いです。
(※当院では、歯周病治療の一環として「骨の再生療法」を行っておりますが全ての症例で出来る訳ではありません。)
「歯周病で失われた骨が完全に再生する」ことを完治とみなすならば、ほとんどの歯周病が完治する訳ではありません。
インプラントの前に歯周病の治療を行った方が良い理由
(1)除菌の観点から
インプラントが抜けてしまう原因は多くは「インプラント周囲炎」といって歯周病菌によってインプラント周りの骨が溶かされてしまうことでおこります。
歯周病の歯の周りは、歯周病菌にとっては格好の繁殖でありこれを放置したままインプラントをしてしまうとそれらの菌がせっかく入れたインプラントの周りにやってきて、インプラントの周りでも増殖してしまいます。
実際、多くの実験で歯周病の患者さんを調べると、インプラントを入れて2週間以内にはインプラントの周りに多くの歯周病菌がやってきていることが分かっています。
当院では、歯周病治療としての除菌療法を十分に行ったのちのインプラントをお勧めしております。
(2)咬み合わせの観点から
歯周病が進行すると歯が浮いてきたり、動いたりすることで咬み合わせが安定しなくなることがよくあります。
残っている歯の本数が少ない場合には、歯周病の治療をしても咬み合わせを安定させることが難しい場合もありますが歯周病の治療を行うことで、全体の咬み合わせのバランスが落ち着くことも多くその後にインプラントで咬み合わせを作っていくとさらに安定した咬み合わせになります。
(3)審美的な観点から
多くの歯周病には、治療後に腫れていた歯肉が引きしまって歯肉の色もキレイになっていきます。それと同時に、歯肉が下がるという現象も起きます。
インプラントを入れる場合は、その人の本来持っている最も自然な歯肉の位置や形に合わせ入れますので歯周病が落ち着いてその人本来の良い歯肉の状態にならないとそれに合わせることができません。
特に前歯にインプラントを入れる場合には、歯周病の腫れが残っていると最終的に美しい仕上げができなくなります。
(4)治療計画の観点から
これは、重度の歯周病にかかった歯がある場合の話です。
歯周病の治療やホームケアでやれるだけのことをやっても腫れや痛みを繰り返す歯がある場合その歯の存在自体が、これから入れようとするインプラントにリスクになってしまう場合があります。
特に、その歯のお隣にインプラントを植立しようとする場合そのインプラントは常にその歯の腫れや膿の悪影響を受け続けます。
逆に言えば、インプラントをやる前に歯周病治療を行うことで「どうしても治りづらいハイリスクの歯」を見つけることができる訳です。