五つの治療方法の長所と短所を詳しく説明します。ここまでの選択ポイントでお話したことと重複しますが、御自分で考えている方法をしっかり確認してください。
インプラントとは
インプラントとは、歯の抜けている部分の顎の骨の中に人工的な歯根を埋め込み、その上に人工歯を取り付ける治療方法をいいます。
インプラントは、人工歯根とも呼ばれ自分の歯に近い構造をもち、口の中の機能回復と審美性を追及した新しい歯科治療です。
〔長所〕
- 自分の歯に近い機能が期待できますので咬みやすく、左右のバランスもあいやすくなります。
- 残っている他の歯に対する負担を軽減でき、結果として、 他の歯の寿命を長くすることが期待できます。
- 歯を失った部分の顎の骨がやせていくことを防ぎますので、顔の形が変わらず、口もとが若々しく保てます(アンチエイジング治療の1つです)。
- 適切にケアすれば十分に長持ちします(当院ではほとんどの方が10年以上もっています)
〔短所〕
- 治療期間が長くかかります(6ヶ月位)。
- 顎の状態などによりできない場合もあります。
- 保険の適応ではないため費用がかかります(当院では、1本あたり26.5~42万円かかります)。
- 開発されて30年なので、永久にもつかは、はっきりして いません。
インプラントを行うには
- 診査(病歴、健康状態の問診、口の中の診査、レントゲン写真、歯型の採取)
- インプラントの埋め込みを行います。(1~2時間位かかります)(当院では木曜日を手術日としております。)
- 状態が落ち着くまで3、4回の通院が必要です。
- 3、4ケ月位歯ぐきが落ち着くのを待って人工歯を入れます。
- 定期検診が必要です。
義歯とは
多数、歯を失った場合や失った歯の前後に歯がない場合に入れる取り外しのできる装置をいいます。いわゆる入れ歯です。
〔長所〕
- この装置を入れるために、他の健康な歯を削る必要はありません。たとえ削ってもわずかで済みます。
- 治療日数が少なくて済みます(2~7回)。
- 治療費は、保険適応のものであれば他の方法より安価でできます。
(5000~20000円)
〔短所〕
- ばねが残った歯にかかり、そのためその歯が虫歯になったり、歯周病が進行しやすくなります。
- ばねや義歯の吸着力で支える事になりますので、咬みごたえと見た目がブリッジよりも劣ります。
- ブリッジと比べて、違和感は残り、固定されていないので 不安定です。そのため、慣れて頂くまで数ヶ月を要します。
- 食べかすが義歯の内側に入りこむので、毎日取り外して掃除をしなければならず手入れが面倒です。
- あごの骨の吸収が1年で0.5ミリ位進行するため、数年後には修正が必要です。(4年で50%)
下の奥歯が2本ない場合
ブリッジとは
歯を1本又は2本程度失った場合、前後の歯を支柱にして、そこを補う装置のことをいいます。
〔長所〕
- しっかりと前後の歯で固定されるので食べ応えは、歯があった時とあまり変わりません。
- 前歯を失った場合でも見た目は、あまり変わらず優れて います。
- 義歯よりも違和感はありません。
- 入れ歯のように食事中や人とおしゃべりしている時に、はずれる心配はありません。
〔短所〕
- たとえきれいな御自身の歯であっても、前後の歯をかなり削らないといけません。
- 治療回数が、少し長くかかります。
- 保険適応の場合、奥歯には銀歯を全体にかぶせます。
- 多くの歯を接着剤でくっつけるため、将来ゆるむことがあります。
- なくなってしまった歯の分の咬む力も負担するので、残っている歯が折れることがあります。
プラスチック製仮歯とは
前歯1~2本を失った場合、前歯の歯にプラスチック製の仮歯を接着剤ではりつける方法です。
〔長所〕
- 抜歯したその日もしくは数日後に入れることができる。
- 他の健全な歯をほとんど削る必要がありません。たとえ削ってもわずかで済みます。
- 治療回数は1~2回で済みます。
- 治療費は安価でできます(5000円以内)。
- 取れた場合、すぐにやり直しが可能です。
〔短所〕
- 強度は不充分なので、少し硬い物を食べるとかけてしまいます。
- 接着剤が三ヶ月位するとゆるんでとれやすくなります。
- 前歯の1~2本までにしか対応できません。
- 長期間経過した場合には変色して修正が必要です。
何も入れない場合
歯がなくなった部位にもよりますが、何も入れないことも一つの選択肢です。
適応する例をあげてみます。
- 奥歯が数本なくても食事にほとんど困っていない場合。
特に奥歯1~2本の場合には、入れ歯を入れても90%以上の方はやめてしまいますので、インプラント以外はあまりおすすめしていません。 - 残っている歯がほとんど虫歯もなく、外観上、問題をあまり感じていない場合。
- 以前取り外しの入れ歯を入れてみたが、異物感が強くて全く使えなかったり、なくてもあまり問題を感じておられない場合。
- 残っている歯が歯周病などでぐらぐらで、ブリッジ、入れ歯では対応できない場合。
- 歯を削ったり、外科手術を極力さけたい場合。
- 年齢が若く(20歳以下)、歯の崩出が途中の場合。